令和3年度中学校教科書 採択ベスト3

令和3年度中学校教科書 採択ベスト3

前回に引き続きまして、今回は全国の中学校でどの教科書が使用されているかの採択ランキングのベスト3を紹介いたします。情報元は文部科学省のHPに掲載されている「教科書の需要数」から採択されている割合を概算で計算しています。日本で一番使用されている教科書はどの出版社か、参考資料として記載します。

<中学国語> 1位 光村図書 2位 三省堂 3位 東京書籍

中学国語は4社の採択教科書があります。そのうち、光村が約60%以上の占有率です。小学国語でも光村がダントツの1位ですので、日本の義務教育である国語は光村の教科書がベースになっているといえます。

<中学数学> 1位 啓林館 2位 東京書籍 3位 数研出版か学校図書

中学数学は7社の採択教科書があります。そのうち、啓林館が約40%弱、東書が約30%と2社で7割を占めています。数研は一部公開されていない数字があるので、おそらく学図と同数程度かそれ以上と予想します。数研のメイン商品は高校数学のチャート式。その影響か、徐々に中学数学にも食い込み始めたのではないかと感じます。

<中学英語> 1位 東京書籍 2位 光村図書 3位 三省堂

中学英語は6社の採択教科書があります。そのうち、東書が約45%を占めており、2位~4位までがそれぞれ15%程度と差がなく、光村・三省・開隆の三つ巴です。小学英語に引き続き、ついに光村が中学英語の2位となりました。前回の大改訂の後と比べて、今回の大改訂後の採択割合では、光村の大躍進と言えるのではないかと思います。

<中学理科> 1位 啓林館 2位 東京書籍 3位 大日本図書

中学理科は5社の採択教科書があります。そのうち、啓林約40%、東書と大日が約25%で、3社で9割を占めています。理数系は啓林と東書の2強状態がずっと続いています。

<中学地理> 1位 帝国書院 2位 東京書籍 3位 教育出版

中学地理は4社の採択教科書があります。そのうち、帝国が約50%、東書が約40%の2強です。地図帳は帝国が98%を占めているので、地図と一緒に教科書を選ぶユーザー側の気持ちがあるのではないかと推察されますが、それでも東書の人気の高さを感じます。

<中学歴史> 1位 東京書籍 2位 帝国書院 3位 教育出版

中学歴史は7社の採択教科書があります。中学地理と同じく、東書が約50%、帝国が約25%と大半を占めています。前回の大改訂で話題になった育鵬社はわずか1%しかなく、今回、山川出版よりも少なく、一過性のものだったと思われます。

<中学公民> 1位 東京書籍 2位 教育出版 3位 帝国書院

中学公民は6社の採択教科書があります。東書が地理・歴史に続いて、ダントツの約60%強です。教出が帝国を上回りましたが、ほぼ同数です。日文が年々採択数を減らしており、旧大阪書籍はどうなるのかちょっと心配です。

主要科目全体を見渡しても、小学校同様にやはり東書の採択割合が高いです。ただ、国語と英語では光村が伸ばしており、理科と数学では啓林が善戦、社会は帝国が頑張っています。

ただ、東書にとっては、採択割合が多くなりすぎると、公正取引委員会より注意勧告が入り、教育委員会に対して、積極的な営業活動ができなくなります。それでもこれだけのシェアを占めているのは本当にすごいことだと思います。この業界の一企業にとっては「生徒数=売上数に上限」がある以上、一つの商品だけを掘り下げるだけでなく、横に幅広く展開をしていかないといけません。次は電子教科書です。これからの東書の展開に要注目です。

次の新しい教科書の使用開始時期は、小学校:2024年4月、中学校:2025年4月、高校:2026年4月です。それまでこの採択割合は大きく変わらないでしょうから、4年に一度の教科書改訂がどれほど子供たちに大きな影響を及ぼすか、少しでも伝わってくれればと思います。

私も教育業界のスミッコにいる以上、今後も教科書出版社の業界の動向は注視していきます。